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  3. This Day / Rico Rodriguez (Man from Wareika 収録)

 2015年9月4日、キューバ生まれ、ジャマイカ育ちのトロンボーン奏者、Rico Rodriguezリコ・ロドリゲスが亡くなりました。享年80歳。彼の代表作である76年のリリースの名盤『Man from Wareika』の1曲目"This Day"をご紹介。

・Rico Rodriguez Man From Wareika 77 01 This day


 リコと言えば、UKの2トーンバンド、The Specialsとの共演のイメージが強く(ボーカルのテリー・ホールによる追悼文がNMEに載っていたので下の方に引用させていただきます)、軽快なスカを思い浮かべますが、このアルバムの冒頭を飾る曲は、静かなマイナー調の鍵盤のメロディから始まるディープなルーツレゲエサウンド。深く優しいリコのトロンボーンの音色にメロメロになります。アルバムのジャケットのイメージもありますが、どこか宗教的で厳かな気分にもなりますね。リズム隊はスライ&ロビー、ギターにジュニア・マービンなども参加!

 60年代初頭、活動期間の早いうちに渡英し、演奏の腕を磨いていたリコが、ジャマイカに帰郷しJoe Gibbsのスタジオにて録音したこのアルバム("Africa"のみイギリスでレコーディング)。作曲もリコが全て手がけていて、演奏だけでなく作曲能力の高さも際立つレゲエ/スカ史上に残る傑作だと思います。ちなみにアメリカではジャズの名門レーベル、ブルーノートからリリースされていて、同レーベル唯一のルーツレゲエアルバムだったりします。

 タイトルにある「ワレイカ」とは、ジャマイカにあったワレイカ・ヒルというラスタコミューンの名前らしく、そこでリコはCount OssieTommy McCookDon Drummondなど錚々たるメンツと切磋琢磨してたらしい。想像するだけで心踊りますね。

 また、今作にはダブアルバム『ワレイカ・ダブ』が存在し、10年くらい前に国内盤CDで再発されましたが、それまでオリジナルのアナログ盤は無茶苦茶高価な値段で取引されてたんだとか。ま、アナログ盤で聴けたら最高だろうけどね。とにかく今ではCDで簡単に手に入るので、ぜひこの傑作を聴いて、リコのご冥福を祈りましょう。天国でスカタライツのメンバーとセッションなんかしてるんじゃないかな。

 2015年9月22日にはスカパラなどが出演する追悼ライブが代官山UNITで行われるので、こちらもチェック!


Rico Rodriguez -『Man from Wareika』収録曲リスト
1."This Day"
2."Ramble"
3."Lumumba"
4."Africa"
5."Man from Wareika"
6."Rasta"
7."Over the Mountain"
8."Gunga Din"
9."Dial Africa"

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・テリー・ホール(ザ・スペシャルズ)によるリコ・ロドリゲス追悼文
「リコ・ロドリゲスの死にあたってどれだけ悲しんでいるか、表現することができません。本物のミュージシャンがどう挑戦して、やり抜くのか、多くのことを彼は教えてくれました。僕にとって彼と演奏することは、スペシャルズにおいて最も素晴らしいことの一つでした。彼のアルバム『マン・フロム・ワレイカ』は僕のオールタイム・フェイヴァリットの一つであり、大きなインスピレーションとなっています。彼が僕らと一緒に演奏することに同意してくれたことが信じられませんでした。彼のザ・スペシャルズへの貢献ははかりきれないものです。彼は本物のジャマイカのスカやレゲエへの重要なつながりをすべて提供してくれました。それは僕らがコピーしようとしていたものであり、彼のトロンボーンは、僕らをネクスト・レベルまで引き上げてくれる必須の要素を付け加えてくれました。そして、彼のトロンボーンが、パンクの範疇を超えて進化する可能性をバンドに与えてくれる手助けとなったのです」

「12インチ・ヴァージョンの“Ghost Town”で聴ける彼の雄大なソロは、僕にとってザ・スペシャルズの音楽的な頂点であり、DJでかけると、今なお観客からの歓声を引き出します。彼のソロはどれも最初はライヴで生まれるものでした。ファン・ボーイ・スリーがザ・スペシャルズを脱退した時、ベーシストとドラマーと僕は、リコと常に彼の相棒だったトランぺッターであるディック・カセルについていくことが最も自然なことに思えました。僕らは彼のバッキング・バンドとしてドイツやヨーロッパをしばらくツアーしたのです」

「リコがザ・スペシャルズといた時間は、彼の音楽的な功績と国際的な名声から考えると、わずかなものです。既にダンディー・リンヴィングストンや何人かと並んで、ジャマイカでは伝説となっており、60年代にイギリスにレゲエを紹介した大使となっています。初めて演奏したうちの一人として、この国でレゲエのライヴをやり、レコーディングを行ったのです。ジャマイカのキングストンにある伝説のアルファ・スクールの生徒だった彼は、最も貧しい経歴の少年たちに非常に厳格な修道女が音楽を教えてくれるその場所で、彼の役割が、人々がよりよき世界を求める渇望と苦難をトロンボーンを使って表現することだと宣言しました。それは、楽器を使った抽象的な方法でありながら、シンガーが歌詞を使うのに劣らずパワフルでした。彼の音楽における目的は常に本気で、ひたむきなものでした」

「リコの演奏はジャズから影響を受けていますが、ジャズではなく、カリブ音楽やメント、カリプソ、キューバ音楽から、フォーク、ブルース、そして、奴隷時代の400年間を超えてしぶとく生き残ったアフリカの伝統音楽まで、すべての影響が合わさったものです。とくにアフリカ音楽でも最もよく知られているのが、ワレイカの丘のラスタ・コミュニティに伝わるカウント・オジーのドラムなどによるナイヤビンギです。リコもこのコミュニティに属していました」

「彼は最後のライヴで、もうそこではトロンボーンを吹くことはできなかったのですが、他のミュージシャンが彼の音楽を演奏するなか、歌い続けていました。伝説的なジャマイカのプロデューサー、バニー・リーはリコについて、トロンボーンをある時期国民的楽器にしてしまうほど独自の音楽を作り上げた点で、彼の仲間のジャマイカの伝説的トロンボーン奏者であるドン・ドラモンドと同じくらいの功績があると語っていました。そして、そうした演奏を行うことで、レゲエを世界で最もポピュラーな音楽にしたのです。リコのバンドは、ボブ・マーリィが最も成功の極みにある時期に、国際的にボブ・マーリィのツアーをサポートしていました。リコはイギリスでのMBEと並んで、栄誉あるジャマイカのマスグレーヴ・メダルを受賞しています」

「力を与えてくれる彼の演奏には、まったく同じ瞬間に、とてつもない喜びと悲しみが混ざったものを感じる時があると思っています。悲しみにくれた、落ち込んだ受難のサウンドと、生きることのユーモアと喜び、正義への怒り、貧困への抵抗、虐げられてきたジャマイカの人々、そうしたものすべてが無駄な装飾もなく、メロディに組み合わされているのです。リコは音楽において沈黙は重要だと言っていました。彼の演奏は、聴く者の心を打ち、笑顔にさせ、決心させる、それを同時に行うのです。世界中の多くの人々と同様、僕は彼のことを多いに惜しむことになるでしょう」
NMEより引用
カテゴリ : Reggae / Dub / Ska ・ comments(0) K 
2015年09月10日(木)

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